保護中: 豊橋技術科学大学
寺嶋一彦
【教員】
2018-10-17
大成建設(株)
長﨑 了
【土木分野修了生】
2018-09-19

パシフィックコンサルタンツ(株)
髙阪 加奈代
【土木分野修了生】

「川が好きで、川のある暮らしが好き」という髙阪さん。そんな川への想いが生まれた原点には、高校時代に経験した東海豪雨の衝撃があったと言います。人を惹きつけ、時には猛威を振るう川と、人はどのように寄り添って暮らせるか。大学で水理学を学び、現職にて知識も体験も積み増しながら、「人の役に立つ仕事がしたい」という願いのまま生きる髙阪さんに、お話を伺いました。

自分の考えを、自分の言葉で伝えることの大切さを学ぶ
―― 髙阪さんが現職に就いた経緯を教えてください。

わたしが高校3年だった2000年に東海豪雨がありました。愛知県の上小田井に工場のあった親戚が被害に遭い、水害の後のまちの状況を目の当たりにしたのです。ゴミが山積し、臭いもひどく、人が住める状態ではなくなり、今まで持っていたものもすべて失ってしまう、という過酷な風景でした。「人って、なんてちっぽけなんだろう、自然に抗うことなどできないのに、そこで必死に抗って生きているなんて……」と衝撃を受け、それでも人の役に立つ仕事がしたいと思うようになりました。大学、大学院では土木系の学科で水理学を学び、ゼネコンかコンサルか、もしくは公務員になるかと若干迷った後、自分に向いていると思われるのはコンサル業だと決め、パシフィックコンサルタンツに入社しました。

―― 大学で履修したJABEE認定プログラムはどうでしたか?

すでに数式としては知っていることでも目の前でその現象が起こるのを見ると「ああ、そういうことか!」と深く納得します。例えば、“層流”と“乱流”の水理学実験は、円管内の流れを可視化し、その違い・状態を観察する実験は印象的でした。

こうした一連の実験について振り返ると、学生が興味と目的意識を持って取り組めるようにと工夫されていた授業だったのだと気付かされます。

―― 学生時代、悩んだことはありますか?

そうですね、小心者なので、課題は着々とこなし、テストも落とさないようにしてきました。与えられる問いに対して「答えはこういうものでしょ」とそつなく答えていたように思います。

そんな中、土木工学というのは、部分的な知識の寄せ集めだけでは到底役に立たず、体系的な理解が必須であるということを知りました。たとえば課題を解くとき、「あなたの考えを述べなさい」と問われました。一般論ではなく、それを理解、解釈したものを自分の言葉で相手に伝える必要に迫られた時、ふと戸惑ってしまう自分がいました。その時、担当教官から「答えが無数にあるかもしれないし、1つかもしれない。仮に答えは1つでもやり方はいくらでもある。君なりのやり方・答えを考えてごらん。」と言われ、拙くとも自分の考えを自分の言葉で伝える大切さを知りました。

立場の違いを超えて「人のための役立つ」という目的に向かう
―― 社会に出てからは、どんな仕事をなさってきましたか?

2007年(平成19年)に入社し、まず名古屋にある中部支社の水工環境部河川計画室に配属されました。最初の仕事では、河川の流水を制御するときに倒伏するゴム製の可動堰の操作マニュアルづくりにまつわる業務を、約半年ほど任されました。慣れない中、右往左往しながら発注者と打合せをするのですが、みなさんきちんと話を聞いてくれたので、経験を少しずつ積むことができました。きっと上司は当時ずいぶんやきもきしたことと思います(笑)。早く一通りの業務を覚えて自分の足で立ちたい、と責任感が芽生えたのはこの時です。

その後も河川計画や氾濫解析などの仕事にあたりながら中部支社で4年ほど過ごしたところ、2011年に東日本大震災が起きました。東北支社へ震災復興の応援に行くこととなり、宮城県及び沿岸市町の津波の解析や復興まちづくりに携わった後、東京オフィスで引き続き、震災復興に関する業務をしながら、専門である河川の減災・防災に関する取組み・支援を行い、現在に至ります。

災害が多い日本において、私が所属する防災危機管理部は必要不可欠な部署ですが、誤解を恐れずに言えば、災害があることで仕事が成り立つとも言えます。ですから本来は、この仕事がなくなること、つまり災害が起こらなくなることが理想なんです。

―― 特に興味を持たれていることを教えてください。

例えば、大雨時に都市河川の水が市街地に溢れ出てしまう被害を低減させるために、どれくらいの規模の施設やソフト対策等を講じればいいか、などといった河川の治水機能の把握と防災・減災対策についてです。被害低減対策(ハード対策)の一つとして、私の修士論文のテーマにもした「横越流型貯留施設(調節池)」といった、堤防を超えて溢れる水を減じるために堤防の一部をわざと低くして溢れさせ、その水が溜まるような調節池を計画することなどが挙げられます。昨今のゲリラ豪雨などの想定を上回る降雨による超過洪水に対する対応、既存施設の老朽化対策なども必要ですよね。

わたしは河道計画や治水・利水計画が専門ですが、河川というのは治水、利水、環境という3つの機能があることから、河川環境についても勉強をしています。また、仕事上、道路計画や下水道などを専門とする人たちとチームでプロジェクトに取り組んでいます。学生時代、先生方や先輩とともに研究プロジェクトに臨んできた経験が礎になっていると感じています。

―― JABEE認定プログラムで学んだことが、仕事に生かされることはありますか?

仕事をしていると、ステークホルダー間の調整や協力が不可欠であり、様々な立場の方が関わります。その中で最適解を出すのがわたしたちの役割です。公共事業を扱っているので、公益性を最優先させ、利害を調整しつつ、バランスをとる必要があります。そこで、大学のプログラムで学んできた「幅広く、多様な視点を持つこと」の大事さをひしと感じますね。

わたしは割と好奇心旺盛な方なので、学生時代は自分の好奇心を満足させることに終始していました。社会に出て、「人のためには何ができるだろう」ということに視点が移ってきたように思います。仕事の中で出会うクライアントも、住民のために、社会のためにできることを考えている方たちなので、目指す方向は一緒ですから、ともに向き合っていきたいですね。

人・モノ・コトに付加価値をつける技術者になりたい
―― 社会人の今、大学時代には何を学ぶべきだと考えますか?

地頭を鍛えることが大事だなと思っています。というのも、学生時代は、知識を得れば問題をこなせることが多かったのですが、社会に出ると簡単に答えが導きだせて解決できることは少ないんですよね。その時に必要なのは、課題解決能力とコミュニケーション能力です。まさに、JABEE認定プログラムの達成目標ですよね。これらの能力は、問題が起こったときに、自分なりに解決できる方法を探し当てる時に役立ちます。失敗するかもしれないけれど、人任せにせずやりきるかどうか。仕事で後輩ができた今、失敗すること、分からないことは、恥ずかしいことではなく、むしろ成長のために必要なプロセスなのだということを感じています。

―― 髙阪さんは、技術士の資格をお持ちとのこと。取得した経緯を教えてください。

21ある技術部門のうち、「建設部門‐河川、砂防及び海岸・海洋」と、「総合技術監理部門‐河川、砂防及び海岸・海洋」の2つの資格を持っています。JABEE認定プログラムを修了していたことで技術士の一次試験は免除となり、仕事をしながら効率よく資格取得できたのはありがたかったです。

入社当初から会社の先輩に「早く一人前になれ」と発破をかけられ、まずは技術士の資格をとらなければ、と思っていました。わたしは中部支社へ久しぶりに配属された女性社員だったのですが「(男性も女性も関係なく、ましてや)君は『女の子』じゃないからね(技術者の端くれ)」とおっしゃっていただいたのです。それが、むしろ励みになりました。

―― 髙阪さんの、将来の夢を教えてください。

人・モノ・コトに付加価値をつける技術者になりたいという野望があります。水辺に付加価値をつけたまちづくり、防災かわまちづくりに興味があり、「かわまちづくり」を通じて水辺空間づくりの活動や防災とのコラボレーションにも携わっています。川のあるまちの魅力を発見して発信しながら、加えて“防災意識”も高めていきたい、今ある日常の生活に「防災・減災」をプラスするというのがわたしの目指すところです。まさに今、企画・検討中の内容もあります。

仕事に多くの時間を費やす日々ですが、その中で自分の夢も一緒に叶えてしまいたい!という気持ちです(笑)。きっとわたしは、川が好き、水辺が好き、川がある風景・まちが好きなんだと思います。

―― 髙阪さん、ありがとうございました。

(2018年10月)

髙阪 加奈代さん プロフィール

1982年名古屋生まれ。2005年名古屋大学工学部社会環境工学科卒業、2007年同大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻修了後、パシフィックコンサルタンツ(株)入社。中部支社への配属後、2011年より国土保全技術本部(現、国土基盤事業本部)勤務。技術士(建設部門‐河川、砂防及び海岸・海洋)、技術士(総合技術監理部門‐河川、砂防及び海岸・海洋)の資格を有する。