武庫川女子大学建築学部建築学科は、学部の4年間と大学院の2年間、計6年間の一貫教育全体が、JABEE認定の学士修士課程プログラム(UNESCO-UIA建築教育憲章対応)です。修士1年の児玉さくらさんは「同じ夢を持つ仲間と切磋琢磨する日々。将来は建築家として公共建築を手掛けたい」と話します。
「建築家になりたい」という夢を実現する大学へ
――児玉さんの所属する研究室や、研究内容を教えていただけますか?
わたしは武庫川女子大学大学院で、建築学研究科建築学専攻に所属しています。武庫川女子大学建築学部・大学院建築学研究科の特徴は、研究室がないことです。全員が1つの研究室にいるようなイメージで、一人1台専用の製図机とパソコンを備えた「スタジオ」という大きな部屋で、ともに暮らすように設計や研究をしています。学部1年生は造形演習で美的感性を鍛え、2年生から4年生の設計演習では小さな住宅から都市までさまざまな規模の設計課題をこなします。4年生後期になるとゼミに所属しながら、スタジオで卒業論文と卒業設計を両方手掛ける、という流れです。
大学院でも、学部同様にスタジオで設計演習を行っていきます。大学院の設計演習では、より実践的に案を深めていくことになります。設計案で「こんな構造に挑戦してみたい」「こんな光を入れたい」と考えた時、同時に開講されている“技術演習”で、構造や環境設備、施工の先生方に具体的に相談ができるのがありがたいです。大学院に進学する人は約8割にのぼります。それはUNESCO-UIA建築教育憲章対応の6年一貫教育を通じて「建築家になりたい」という志がはっきりしている人が多いからだと思います。
―― どんな経緯でJABEE認定プログラムを選択したのでしょうか?
武庫川女子大学建築学部建築学科は、学部4年間でJABEE認定を受けていると同時に、大学院2年間と合わせた6年一貫教育全体も、学士修士課程プログラムとしてJABEE認定を受けています。大学の合格通知にも、このJABEE認定プログラムについて記されていて、「建築家になるのに適した環境がある」ということを知り、ここに入学するしかない!と思ったのを覚えています。
わたしは小さい頃から、建築設計の仕事に就くのが夢でした。というのも、親が転勤族で5年ごとに引っ越しをしていて、住み替えのたびに住宅物件情報を見て「自分だったらもっとこんな間取りがいいのにな」などと考えるのが好きだったからです。大学での学びが夢を叶える道に直結していることが嬉しくて、入学に迷いはありませんでした。
「もっと学びたい」という思いを支えてくれる教育環境
――大学生活はどのような日々ですか?
学部1年生から週6日授業があり、朝から寝るまで建築を学んでいます。平日の午前中は理論科目で建築の基礎知識を学び、午後は演習科目で設計を学び、土曜日はフィールドワーク科目で実際に現地に出向いて見学や調査をします。課題はおおよそ月に1課題のペース、前後期それぞれ3課題の提出があり、他大学に比べてハイペースで大変です。課題の講評会は全員が全員の前でプレゼンをするという本学独自のスタイルで、課題毎に2日間に渡って行います。1学年の定員45名という少人数制だからこうした密度のある演習ができるのだと思います。
とても忙しいですが、これまで同じスタジオで一緒にやってきた仲間がいるので、成長を認め合い、精神的にも支え合って乗り越えていけるという感じです。何より建築を学びたくて学んでいるので毎日が楽しいです。
ただ同じ場所に留まっていると思考が偏り、固まってしまうので、長期休暇では他大学の学生と関わる機会をもち、また国内外いろいろと旅もします。学部3年生の時は学外の研修プログラムでデンマークに赴きました。たくさんインプットをした後は、インスタグラムで体験の記録をアウトプットしています。
―― JABEE認定プログラムとして特徴的な履修内容はありましたか?
大学院に入るとグループ設計課題があります。そこでは意匠はもちろんのこと、構造や環境設備、施工の先生方の指導も受けて、大学構内に、地球環境に配慮した原寸大の茶室をつくります。実際のモノと向き合うと、予算やスケジュール、自分たちで応用できる技術やディテールまで考えることになって、メンバーと多くの議論を重ねながら、多面的な理解が経験として深まります。
贅沢な教育環境ですが、これは学生の学びやすい環境を大学が考えて整備してくれているからだと思います。たとえばスタジオの廊下に出てすぐ先生方の部屋があるので、構造についても環境設備についても疑問を持ったらすぐ聞きに行けるのです。勉強したい、やってみたい、という学生の自発的行動を大事にしてもらっているなあと感じます。また、講義と演習がきちんと結びついて、学びが定着するように授業が組み立てられています。設計演習で「すべてつながっているんだ……!」と実感できる瞬間があり、嬉しくなります。
公共建築の設計を通じて社会に貢献する未来へ
――履修する目的が明確な児玉さんにとって、それをサポートしてくれる教育環境はありがたいですね。
そうですね。わたしに限らず、この大学には「将来は一級建築士になり、資格を生かして仕事をするぞ」という目的を持った学生がとても多いです。そう思わないとこの忙しい日々を乗り越えていけないです(笑)。もちろん何となく入学した人もいるけれど、大学生活を経てみんなで高め合うことの楽しさを知り、モチベーションが上がっていくようです。
スタジオで夜遅くまでエスキスを頑張ることも、プレゼンまでの追い込みを走り切るのもしんどくて楽しいです。設計演習というのは繰り返し繰り返しやる中で少しずつ理解が深まり、楽しさも増幅するものだと思うのです。うまく設計できなかった課題があると落ち込みますが、仲間や先生とともにいることで孤独にならず「よし、次はもっといいものをつくってやるぞ」と持ち直すことができます。
――将来はどんな仕事を手掛けたいですか?
来年には一級建築士の資格を取り、設計事務所に就職をして公共建築をつくりたいです。というのも、大学では公共建築の設計課題が多いのです。病院や特別養護老人ホーム、幼稚園などの設計を手掛けていくうちに、地域住民が居心地よく使える、喜んでもらえる建築をつくってみたいという思いが膨らんでいきました。公共建築は社会的資産ですし、現代社会への影響力が大きい建築物ですから、責任感を持って取り組みたいです。また、建築が地球環境に与える影響についても考えていきたいです。その場しのぎで地球に悪影響をもたらす建築をつくったら、その影響はいずれ人間に返ってくると思うからです。設計を通じて社会に貢献できる建築家になれるように努力したいと思います。
――JABEE認定プログラムのある大学に進学を考える後輩に、伝えたいことがあれば教えてください。
大学時代をどう捉えるかによりますが、勉強しないでなるべく楽に遊んで過ごしたいという人はともかく、将来まで長く「この学問が楽しい!」と思えるようになりたい人は、その大学でどういう学びを提供してもらえるのか、どんな教育環境があるのかをしっかり確認した方が良いと思います。JABEE認定プログラムを履修できる大学に入学すると、忙しいけれど充実した大学生活が送れるのではないでしょうか。
――児玉さん、ありがとうございました。
(2024年8月)
児玉 さくらさん プロフィール
2020年大阪府立生野高校卒業。同年 武庫川女子大学建築学部建築学科入学。2024年武庫川女子大学建築学部建築学科卒業。同年 武庫川女子大学大学院建築学研究科建築学専攻入学。現在、修士1年生。