JABEE認定の概要と意義

JABEEは認定を申請した技術者教育プログラムを対象に、学習成果の評価(アウトカムズ評価)を中心とした審査によって認定を行います。

JABEEは高等教育機関の技術者教育プログラム(大学学士課程の学科や学科内コース、高等専門学校(高専)の専攻科、修士課程など)の教育内容を認定基準に基づいて審査し、基準に適合していると判定された技術者教育プログラム(以下「プログラム」と呼びます)を認定します。

「何を教えるか」ではなく「何を身につけさせているか」に重点を置く審査

以前は、優れた教育かどうかの判断基準は「何を教えているか」が主要な観点でした。しかし、JABEEの認定審査では「何を身につけさせているか」に重点を置いています。JABEEは技術者教育認定に関する国際協定に加盟しており、協定で合意された指針に準拠して認定基準を設定しています。JABEEの認定基準は大きく以下の4つの基準で構成され、プログラムはこの基準に適合するような教育を実施する必要があります。JABEEの審査もこの基準に基づいて行います。

基準1 学習・教育到達目標の設定と公開
基準2 教育手段
基準3 学習・教育到達目標の達成
基準4 教育改善

この認定基準に則り、プログラムには

  1. 学習・教育到達目標(履修生に何を身につけさせるか)の設定 【Plan】
  2. 学習・教育到達目標を達成させるための教育手段(カリキュラム、教育体制、教育環境など)の整備 【Do】
  3. 履修生に対する適切な学習・教育到達目標の達成度評価 【Check】
  4. これらの実施状況を踏まえた継続的な教育改善の仕組みの構築と運用【Act】

という一連の手順に基づく教育の実施が求められます。

プログラム履修生に学習・教育到達目標を達成させるための教育手段はプログラムの創意工夫に委ねられており、プログラムには自由度が高く多様な方法による教育が推奨されています。JABEEは、プログラムの個性や独自性を尊重して審査を行います。

「機関別認証評価」と「JABEEの技術者教育プログラム認定」の違い

高等教育機関が実施する教育の質や改善活動を評価する仕組みは、JABEEのプログラム認定のほかに、代表的なものとして文部科学省の定めた認証評価制度があります。 認証評価は、わが国のすべての高等教育機関に対して、2004年度から実施が法律で義務付けられており、評価と認証の単位は文系、医学系などを含めた教育機関全体です。

これに対し、JABEEのプログラム認定には法的義務がなく、認定の対象は教育機関が自らの判断で認定を申請した理工学系、情報系、農学系のプログラムです。認定する単位は一つまたは複数の学科や学科内のコースなど、教育機関が専門分野、教育目標やカリキュラムの実質的な内容を考慮して決めた範囲(プログラム)です。

国際協定に基づいた認定基準と国際的同等性の保証

JABEEは、ワシントン協定を始めとする技術者教育認定に関する国際協定に加盟しています。JABEEを含め、世界各国の加盟団体の認定基準は、協定が定めた「技術者となるために必要な知識・能力を身につけさせる教育」の指針に基づいて定められています。このため、認定プログラムの修了生には、協定加盟国間での国際的同等性(技術者となるための知識・能力を等しく身につけていること)が保証され、海外で技術者として働く際(日本企業所属の人が海外で働く場合も含む)や海外で資格を取得する際に有利となります。

JABEEの認定の意義と利点

JABEEが実施するプログラムの審査、認定および公表により、教育機関とプログラム修了生には様々な利点がもたらされます。その主なものは以下のとおりです。

  • 技術者教育の質を保証し、優れた教育方法の導入を促進する。
  • 教育活動に対する組織の責任と教員個人の役割を明確にするとともに、教員の教育に対する貢献度の評価を推進する。
  • 教育の改善に意欲的かつ国際的同等性を認められた教育プログラムであることを世界に向けて宣言する。
  • 認定プログラムの修了生が学外に公開された学習・教育到達目標を達成し、目標で示された知識・能力を身につけていることを社会に知らせる。
  • 認定プログラムの修了生は、日本の国家資格である技術士資格を取得するための第一次試験が免除される。
  • 認定プログラムの修了生には、JABEEが加盟する教育認定に関する国際協定に基づく国際的同等性が保証され、海外での就労や資格取得に有利となる。

JABEE設立の経緯