企業は今、プロフェッショナルとしての専門能力に加え、広く世界で活躍できるための多岐にわたる素養を持った人材を求めています。
それは、自らの問題意識に基づいて課題を設定する能力や、他者に正解を求めず主体的に解を見出す能力、社会的・文化的な背景が異なる人々と協働して事業を遂行する能力などであり、さらには地球規模の課題を分野横断的な発想で解決する能力も必要とされています(経団連「今後の教育改革に関する基本的考え方」2016年4月)。

JABEEは、大学や高等専門学校などの高等教育機関がこのような社会の要求を取り入れ、それに応えられる技術者を育成していく教育プログラムを実現し、それを継続的に実施していけるようにサポートしています。
また、技術者教育の国際的同等性を確保するため、技術者教育認定団体の世界的枠組みであるワシントン協定等の考え方に準拠した認定基準により教育プログラムを審査し、認定しています。基準の中ではプログラム修了生が身につけているべき知識、能力として規定するのは、以下の9項目です。

  • (a)地球的視点から多面的に物事を考える能力とその素養
  • (b)技術が社会や自然に及ぼす影響や効果、及び技術者の社会に対する貢献と責任に関する理解
  • (c)数学、自然科学及び情報技術に関する知識とそれらを応用する能力
  • (d)当該分野において必要とされる専門的知識とそれらを応用する能力
  • (e)種々の科学、技術及び情報を活用して社会の要求を解決するためのデザイン能力
  • (f)論理的な記述力、口頭発表力、討議等のコミュニケーション能力
  • (g)自主的、継続的に学習する能力
  • (h)与えられた制約の下で計画的に仕事を進め、まとめる能力
  • (i)チームで仕事をするための能力

履修生の方は、国際標準を満たすこれらの知識・能力を修得しつつあることを認識し、自信をもって課題に取り組んでください。
修了生の方は、身につけた知識・能力を生かし、信頼される技術者として社会で存分に活躍してください。

認定プログラム修了生であることを生かす

就職活動において

技術系職員の採用において、JABEE認定プログラムの修了生を優先する自治体も出てきています。
企業が求めているのは、職業人としての基礎能力を備え、デザイン能力など創造的な能力を持つ人材です。JABEE認定プログラムで身につけた上記9項目の知識や能力は、企業のニーズに合致したものだと言えます。
就職活動では、自信をもってJABEE認定プログラムの修了生であることを主張してください。

技術士資格を取得するとき

技術士は高度な技術的経験と能力を持つことを公に認める国家資格です。通常は第一次(基礎的知識・能力)と第二次(実務知識・能力)の二段階の試験が行われますが、JABEE認定プログラムの修了生は第一次試験が免除されます。技術士については具体的には当Webサイトの「JABEE認定とは」にある 「技術士への道」のページを参照してください。

海外での活躍の道を拓く

JABEEによる技術者教育プログラムの認定は、世界的なネットワークのもとに行っています。
発端は、米英などの6か国による、技術者教育の質保証システムの同等性を相互に承認するワシントン協定の誕生です。この協定は1989年に締結されました。JABEEは設立当初からこの協定への加盟を目指し、2005年に7番目の団体として加盟しました。現在は、中国、韓国、シンガポールなどのアジア各国のほか、中南米にも広がり、20か国以上が加盟しています。
ワシントン協定の趣旨は、教育の質保証システムの実質的同等性の相互承認ですが、今のところ他国の認定プログラムの修了生を自国の修了生と完全に同等に扱うまでには至っていません。しかし、日本では他国のワシントン協定加盟団体が認定したプログラムの修了生に対する技術士第一次試験免除措置を2022年から開始しました。また、マレーシアのようにワシントン協定加盟団体が認定したプログラム以外に留学した場合は国費留学生としない、あるいは留学後に帰国しても一部の公務員試験や専門職能資格の受験ができないなど、国内制度に結び付ける国も出てきています。