5代会長就任挨拶
会長からのメッセージ
5代会長就任挨拶
就任のご挨拶
JABEE会長 富田 達夫(とみた たつお)
2019年5月29日の理事会で有信睦弘前会長の後任として第5代会長に選任されました。
JABEEが結成されて今年で20年を迎えます。歴代の会長のご努力、関係各位のご努力はもとより、JABEEを支える関連学会の方々のご尽力により20年目を迎えることができたことを考えると、改めまして責任の重さを痛感する次第です。
時代は大きく変革しています。私達を取り巻く環境も大きく変わろうとしています。本来は長期的な視点で議論されなければいけない教育についても、この大きな変革の中では少なからず影響を受けていきます。人々の価値観をも変えていくような時代の変革・うねりの中で、多くの大学等の教育機関も自らの手で変革を進めています。
JABEEのプログラム認定を通して、教育機関の変革のお手伝いができるのではないかと考えています。一方で、日本の技術者教育認定機関として20周年を迎えるJABEEの今後のあり方については、未来の日本、世界を見据えた長期的な議論が必要になってきていると感じている次第です。
私は30年以上にわたり、民間企業で主に技術者として働き、その後の約10年は経営者として技術経営に関わってきました。終身雇用を前提とした日本の企業の多くが、その特殊性を活かして日本の戦後の発展を支えてきましたが、急速に進むグローバル化の中で、むしろその足枷により、グローバルな競争力を低下させていることは多くの事例の中で垣間見られるようになってきました。もはや地頭の優れた人材を集めて企業内でじっくり教育するという時代は終わりました。すでに多くの企業が終身雇用を前提とした枠組みを変えようとしています。加えて、日本の少子高齢化はもはや止めようのない状況にまできており、外国人労働者の活用が不可欠の状況になってきています。こうした中で、採用する個人がどういう教育をうけてきたのか、その質を保証できる仕組みは極めて重要な役割を果たすと考えています。今こそJABEEの役割の重要性について多くの企業に再認識頂くとともに、変革を目指す多くの教育機関の新たなる認定プログラムへの参画が重要性を増してきていると感じております。こうした機をとらえ、減少し始めた認定プログラム数に歯止めをかけ、増加に転じる努力をしていきたいと考えております。
幸いにも、多くの先人たちのご努力により国際活動は活発化してまいりました。ワシントン協定、ソウル協定での6年の継続加盟の承認、キャンベラ協定正式加盟に向けた取り組み、さらにはインドネシアIABEE設立支援の活動等、今後とも皆様方のご協力を頂きながら進めてまいりたいと思います。こうした活動は、外国人労働者の増加や人材の流動性を高めていきたいと考える企業にとって、技術者の質の保証という意味でも大きな役割を果たしていくものと考えます。更には、海外で技術者として活躍したいと考えている学生にとっても国際標準に合致したJABEEの認定制度が有効となるはずです。
2020年から小学校でのプログラミング教育が始まります。情報があらゆる分野に深く関わりを持ち始め、大量に蓄積されたデータが価値となって社会に還元されるようになってきました。あらゆる企業が企業内の情報や企業外の情報の活用を通して企業価値を高めようとしています。これまで技術者を多く抱えてこなかった企業においても、自社価値を高めるためには、情報技術や工学技術を活用できる技術者を求めるようになってきました。扱う情報には機微な情報もあれば怪しい情報も含まれ、これまで以上に高度な技術や、倫理観が求められるようになってきました。今こそ、質の担保された技術者が活躍できる時代に突入しようとしているわけです。
ご存じの通り、日本は多くの課題を抱えた課題先進国とも言われております。こうした課題を解決していくためには、企業も大学等教育機関も変革が必要です。技術者としても、プロフェッショナルとしての専門能力に加え、チームワーク力や課題解決能力などの幅広い素養を持つ骨太の人材が必要とされています。JABEEは関連学会とも緊密に連携しながら、こうした社会の要請に応えるべく尽力してまいりたいと思います。新会長として微力ではありますが、JABEEの活動強化に少しでも貢献できるよう頑張って参ります。皆様方のご協力をよろしくお願い申し上げます。
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